格オタブログ

格闘技のあれこれを記事にしていきます。

【軍鶏】格闘漫画軍鶏のネタバレあらすじと感想。成嶋亮の最後についても解説。



軍鶏は98〜15年まで長期間続いた格闘漫画。

暴力的なシーンが数多く描かれており、

格闘技の負の側面を描いた名作として語り継がれています。

この記事では軍鶏のネタバレあらすじと感想を書いていきます。

 

 

 

軍鶏1〜2巻少年院編

 


親殺しで少年院に入れられた成嶋亮は壮絶なイジメに合う。彼の前に現れたのが少年院の体育で空手を指導している黒川。

死の危険すら感じるイジメに対抗する為成嶋は黒川に指示して空手を始める。

心と体を壊されない為に成嶋は必死に空手を学び逞しくなっていく成嶋は逆にイジメてきた院生達を返り討ちにしていく。

成嶋の成長に少年院のボス金明勲自らが動き、成嶋を殺害しようとするが、成嶋は金の鼻を噛みちぎり勝利する。

それ以降成嶋に手を出すものはいなくなり、彼はますます空手に打ち込むようになり、院を出る頃には逞しい青年になっていた。

 


感想

抑圧された家庭で生まれ育ち親を殺してしまった少年成嶋。第一話から超絶陰鬱な展開が続きます。綺麗事ではなく、ただ奪われない為に空手を学ぶ成嶋は、暴力こそが自分を肯定する手段であると考えるようになっていく。格闘技の暗黒面がここまで描かれている作品は少なく、1〜2巻でガッツリ心を掴まれた。

 


3〜12巻 リーサルファイト

出所した成嶋亮は男娼として生活していた。

仲良くなった女性は薬物で廃人となり、昔の友人はヤクザの使い走りになっていた。リョウは行き詰まった現状への不満から夜な夜な街で喧嘩に明け暮れるようになる。

そんな折に空手団体番竜会の格闘技イベント「リーサルファイト」を知る。生き残るための暗い空手しか知らないリョウは、リーサルファイトのエース菅原直人がスポットライトを浴びる中戦う姿に激しく嫉妬した。

リーサルファイトのプロデューサーはスターである菅原の対抗馬として、暗黒の道を進んできたリョウを表舞台に上げることを画作。

テレビ関係者が連れてきた一流のトレーナーの元で鍛錬を積み強くなるリョウだったが、菅原はリョウの挑発には乗らない。そこでリョウは菅原の彼女を陵辱し、これが原因で菅原もリョウと対決する覚悟を固める。

東京ドームで相対する2人。親殺しの元少年犯罪者であることが世間にバレたリョウは大ブーイングの中菅原と戦うことになる。

壮絶な試合の末、最終ラウンドでリョウは立ったまま失神。

リョウは目覚めると、生き別れた妹が薬物のせいで廃人になっていることを知る。

時同じくして、リョウとの完全決着を望む菅原は果し状をリョウに送り廃寺で誰もいない中2人は本当の殺し合いを行う。

菅原はリョウを仮死状態まで追い込むも、仮死状態から目覚めたリョウが菅原の後頭部を殴りつけ、菅原は昏睡状態に陥る。

 


感想

 

爽快感ゼロの展開…旧友も恋人も誰も幸せにならないし、リョウ自身が悪鬼のような最低野郎に成り下がってしまっている。というのも、リョウは親の抑圧と刑務所での経験ですっかり精神を病んでしまっているからだ。リョウはこの世は奪うか奪われるかであり、暴力の世界でしか生きられない男になってしまっていたのだ。

武道に生きてきた菅原との対比も素晴らしい。普通の漫画なら菅原とリョウは和解なり、理解し合えるものだが、2人の結末は殺し合いで、なおかつ最後は明らかに菅原は致命傷を受けている。

誰1人として幸せにならない格闘漫画なんてこの世にあったんだな…刃牙ばっかり読んでたからとても新鮮だ。

ストーリーはともかく、リーサルファイトはキックルールでかなり当時のk-1の影響を受けていることがわかる。

格闘描写も絵がうまくて迫力あって読み応え抜群。

 

 

 

14〜16巻中国編

 

菅原との戦いから半年。リョウは廃人になった妹夏美の治療費のために中国の地で賭け試合と男娼として金を稼いでいた。

賭け試合で負けなしだったリョウを止める為に送られてきたのは猿の面をつけた隻腕の達人「斉天大聖」。リョウは斉天大聖相手に敗北するも、彼の師匠である老人が現れて、リョウは一命を取り留める。

リョウは斉天大聖を倒す為に老人の元、山奥で修行を始める。

山では老人の弟子である少女燕と共に修行をし始めるリョウ。老人、燕、リョウは束の間の平穏を楽しむが、老人とリョウを追って斉天大聖は山奥までやってきたのだった。

斉天大聖は老人を殺害、その後、燕に自らの軍門に下るよう迫るが、燕は自ら命を絶つ。

リョウは2人の亡骸を見つけ、斉天大聖に勝負を挑む。斉天大聖の恐るべき実力に圧倒されるのも、老人に教えてもらった発勁で勝利を収める。敗北した斉天大聖は崖から身を投げて自ら命を絶ったのだった。

 


感想

途中までは、おおお、少年漫画みたいな熱い展開だなぁ。この老人も軍鶏には珍しいギャグキャラじゃん!!!いいじゃんいいじゃんと思っていたら、燕まとめて殺害されて涙。

斉天大聖が死の間際にリョウに言い放った「お前は醜い」は暴力の連鎖を断ち切れないリョウを端的に表す言葉だった。

燕ちゃん…とにかくかわいそう…

 


17〜28巻グランドクロス編




性善説を体現したような男トーマは天才バレエダンサー。彼はリョウが菅原と戦ったリーサルファイトを見て対局の存在であるリョウに心惹かれていく。トーマはその異常なまでの善性からリョウを闇から救い出そうと無意識のうちに考えていたのだろうと推測できる。

トーマはリョウと菅原を追い続けるが、2人は忽然と姿を消し、リョウは行方不明に、菅原は植物人間となり帰ってきた。

本格的に番竜会で空手を始めるトーマだったが、人を殴ることが出来ず、それを見た番竜会の藤原は彼を柔道最強の男吉岡に引き合わせる。吉岡と組手をする内にトーマは吉岡の技を全て吸収していった。吉岡はトーマの人柄と格闘技の才能に惹かれていき、サンボの達人イリューヒンを紹介するのだった。

このようにして、組み技のスペシャリスト達がトーマの元に集まった。

そして、トーマの異母兄弟であり、巨大企業の社長でもある仁はトーマの為に格闘技団体を設立し、リーサルファイトとの対抗戦をすること、大将戦はトーマvsリョウを組むことを番竜会会長である望月に持ちかけた。

望月は番竜会を裏から50年間支えてきた番竜会黒道着衆を20年ぶりに招集する。

一方、リョウは斉天大聖の死以降、無気力にただ生きていた。日本で男娼と賭け試合をする日々。リョウの腕はすっかり鈍ってしまっていた。そんなリョウは植物人間となった菅原が意識がなくとも空手の型をベッドで行う姿を見て迷いがなくなり、再起する。

リョウは総合ルールに適応する為に総合格闘家吾作の元で修行を始めた。

そして、対抗戦『グランドクロス』が始まる。

トーマの元に集まった一流の格闘家達と番竜会黒道着衆の暗黒空手家達が激闘する。

チームトーマの2勝1敗1分で迎えた大将戦。トーマは組み技でリョウを圧倒するも、リョウの心の闇に囚われ、ついに打撃技を解禁する。降りしきる雨の中戦う2人。

最後は土砂降りの中で試合は中止となった。

リョウの闇によってトーマは心を閉ざしてしまい、一方のリョウは妹夏美の元へと帰るのだった。

 


感想

 

菅原以上にリョウと対極の男トーマが主人公と言ってもいいこの話。トーマの深層心理が絵画となって表現されるのは孤高の人を彷彿とさせた。

黒道着衆と言う厨二ワード全開のキャラクター達が出てきたのは正直かなりテンション上がった。柔道金メダリストの吉岡と剛腕四號の試合は全巻通してもベストバウトではないか?

普通ならトーマによって救われる展開になるが、軍鶏だとリョウの闇にトーマが飲まれてしまう…暗い…

天才格闘家vs闇の格闘家と言う少年漫画みたいな展開なのに、いちいち内容が暗い。これが軍鶏の醍醐味なのかもしれない。

リョウの友人心優しいオカマのヒロシはこの編では癒しキャラだったが、彼も超酷い目に遭っててかわいそう…

 

 

 

28〜34巻ドブ組編

妹の夏美は薬物の後遺症で廃人になってしまっていたが、友人のトーキチのサポートもあり、リョウと夏美とトーキチの3人は束の間の平穏な暮らしを享受する。

その中で、金の死、望月の死、黒川の死、吾作の新生活などをリョウの関係者達は彼の周りから姿を消していった。

夏美はリョウが拾ってきた捨て犬ペロのお陰で容態が回復していく。

リョウは金の為再び都会に戻るも、もはや格闘技で金を産むどころかご飯を食べることすら難しい。そんな折、家出少女のサキと出会う。サキは抑圧的な父親から逃げており、かつての自分とサキを重ねるリョウは彼女と行動を共にするようになる。一方、サキの父親は娘と行動を共にするのがリョウと知り、元殺人犯の彼から娘を引き離す為、危険な何でも屋『どぶ組』に娘を連れ戻すよう依頼する。

どぶ組こと、バカ兄弟は早速リョウの家に行くも、リョウに返り討ちに遭う。次にバカ兄弟は夏美を誘拐しようとするも、トーキチによって阻止される。重傷を負ったトーキチだったが間一髪リョウによって救われる。

どぶ組とリョウは廃工場で最終決戦を行う。

どぶ組が起こした大爆発により、勝負はリョウが勝利し、どぶ組に二度とサキや夏美に近寄らないことを誓わせるも、リョウは爆破とどぶ組に負わされた傷のせいで命を落とし、リョウが死んだ場所から新しい芽が出るのだった。

 


感想

 

リョウは死ぬことでしか救われなかったのだろうか…最後の敵のどぶ組は純真無垢な性格で善悪すらない。まさにリョウの命を奪う死神役としてはピッタリだった。

幸せな暮らしを望むも、今まで奪ってきた命がそれを許してはくれない。リョウは最後にどぶ組を助け、さらにはサキを助け、死んだ体からは芽が出た。

闇の中で生きてきたリョウだったが、最後の最後に救われたのではないだろうか?

 

 

 

・まとめ

・性善説と性悪説

 


リョウは人の性は悪だと決めていた。

彼の言う通り、登場人物の中にはどうしようもない悪に落ちていくキャラも多いが、その対局としてのトーマや、同じくどん詰まりだったが身を持ち直した吾作など、善側の人間も描かれている。そして、その善悪の対比を軍鶏では活殺拳と殺人拳の両側から描き格闘マンガとして成立させているのだ。

リョウはその拳で人を殺し続けてきたが、最後、サキを救う為に拳を振るうのだ。

だからこそ、どぶ組との戦いの前、着衆がリョウに『金でもない、何をあてに戦う?』と聞くのだ。リョウが何のためにどぶ組と戦ったのか、これは人を生かす為であり、これぞ軍鶏のラストとして相応しい結末であった。

 


・実は少年漫画な設定

 


設定だけを抽出したら、軍鶏はかなり少年漫画だ。

 


・少年院で格闘技を教わる

・体重差のあるライバルと命をかけて戦う

これらはあしたのジョーにそっくりだ。

 


また、

・暗黒の空手集団黒道着衆

・黒道着衆に立ち向かうエリート格闘家

の構図はバキの最強死刑囚編みたいだ

 


さらに

・悪に落ちた中国拳法の兄弟子を倒す

は一昔前のカンフー映画である

 


あくまでも大筋は少年漫画なのだが、そこにとことん暴力と人間の汚い部分をぶち込んで練り混ぜたのがこの軍鶏なのである

 


・弱くなる主人公

 


普通は格闘漫画は主人公がどんどん強くなってインフレが起きるのだが、リョウは章が終わると弱体化する。これは、リョウが暴力でしかない己の格闘技に絶望しており鍛錬を積まなくなるからである。

自分の強さに誇りを持てない。これもまた軍鶏の特徴である。

 

 

 

・まとめ感想

 

軍鶏は普通の格闘漫画に飽きた人におすすめの漫画だ。格闘技の負の側面を描いたとよく言われているが、そこら辺はむしろ漫画版餓狼伝とかの方がわかりやすく描かれている。

この漫画は格闘技プラス哲学的な要素が特徴でむしろバカボンドに近い。だから、バカボンドが好きな人はハマると思う。

長所ばかり書いたが、短所としては、不幸のためだけに登場するようなキャラがいて、なかなか感情移入が難しい点。もう少し、脇役にもスポットライトを当てて欲しかった。

とは言っても、全体的には大満足で読み終えることが出来た。

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