格オタブログ

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2000年 ボクシング最大のマッチ 畑山隆則 VS坂本博之

https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/s0087/

20世紀最後のビックマッチ

無冠の帝王に王者が挑む。

・時代  2000年

・対戦  畑山隆則VS坂本博之

・ルール ボクシング

・勝敗  畑山隆則の勝利

gyudonhitosuji.hatenablog.jp

 2000年10月11日、のちに歴史に名を刻むこととなるライト級王者の座をかけた戦いは横浜アリーナで行われた。

 当時現王者であった畑山は元々青森の不良で、高校を中退して上京、世界チャンピオンになるためにボクシングを始めた。ボクシングのきっかけはテレビで辰吉丈一郎の試合を観戦し、不良として成り上がる辰吉に自分を重ねた為であった。上京後、柳和龍トレーナーに出会い、そこで鍛錬を行った結果、無敗のままスーパーフェザー級の王者となった。(なお畑山が王者になった試合は、その年の年間最高試合にも選ばれている)
その後、挑戦者ラクバ・シンにをTKO負けを喫し王座から陥落するとともに、現役引退を表明し、芸能界入りを決意する。

 

しかしその後、半年で引退を撤回。階級をライト級に上げて復帰初戦でWBA世界ライト級王者ヒルベルト・セラノに挑戦。約1年のブランクや今までのトレーナーと決別していたこと、一階級上げたライト級であることなどから価値を不安視する声もあったが、KO勝ちを収めて王座の獲得に成功し、2階級制覇を達成していた。

これはそんな4ヶ月後の試合であった。

 

 対して対戦相手である坂本は以前、畑山と同様ヒルベルト・セラノに挑むも王座獲得には至らず。またこの挑戦は王座獲得3度目の挑戦であったが失敗に終わっている。

 

 幼少期より極貧の生活をしていて、親に虐待を受けながら育った坂本は、弟が栄養失調で倒れてからは施設で育てられるようになった。そんな生い立ちもあってか、彼はとても優しい性格であったことが関係者の口から語られている。そんな彼のボクシングスタイルは優しい性格とは真逆であった。相手に突進し、相手のパンチを恐れず、ひたすら前に突っ込んでいき、パワーを活かした破壊力のあるパンチを相手に喰らわせ、勇猛果敢なインファイトで相手を圧倒した。
このようなファイトスタイルには、「子供達(特に、自分と同じ様に児童養護施設に預けられたり、不遇な経験をした子供達)に自分が戦う姿を見せて、生きる希望、勇気を与えたい。」という、坂本自身の願いが込められているとされる。

圧倒的な実力を持ちながらもベルトにはいつもあと一歩届かない彼をメディアは『無冠の帝王』と呼んだ。

 

 そんな坂本の世界王者4度目の試合が畑山との対決であった。

 2000年10月11日、第1ラウンドから壮絶な打ち合いで始まる。スピードの畑山とパンチ力の坂本、事前に言われていたその評価をそのまま表すかのような打ち合いだった。

 

 畑山の光速パンチを何度も受けながら果敢に向かう坂本の姿は彼ら2人の魂のぶつかり合いそのもの。開始早々から目の離せない展開は、歴史に残る試合であることを予感させた。しかしそんな中でも畑山のパンチを受け続けた坂本は次第に足が止まってしまう。迎えた10回、開始早々に王者の連打を浴びたところで坂本はダウン。

 

セコンドからタオルが投入され、畑山は防衛成功、坂本は4度目の挑戦も失敗に終わった。

 

 

 最後まで盛り上がりを見せた激しいこの試合は、何度見ても感動してしまう。結果がわかっている今見直しても、坂本が勝つのではないか、畑山が負けるのではないかと思わされるほどこの試合には変わらない熱がある。この劇的な試合は後に同年の年間最高試合に選ばれた。

 

 試合後、坂本は自身が支援していた孤児院へと向かう。

 勝てなくてすまなかったと、謝る坂本さんを子供たちが拒むはずもなく、孤児院の子供たちは変わらず尊敬の眼差しで坂本さんを迎えた。

 

 その時、こんなエピソードがあったそうだ。

 一人の少年が坂本選手に『僕は畑山が嫌いだ』と言ったそうだ。どうして?と坂本選手が聞くと『だって坂本選手を殴るんだもん』少年は尊敬する坂本選手を傷つけた畑山選手を許せなかったのだ。そんな少年に坂本選手は優しく語り掛ける。

『僕も、畑山選手も一生懸命戦ったんだ。だから畑山選手のことを悪く言っちゃだめだよ』

 このエピソードは10年近く前、テレビで紹介されており、不覚にも坂本選手の人格者ぶりに泣いた。

 

 坂本選手は生涯、ベルトを腰に巻くことは出来なかった。

 しかし、彼はそれ以上のものを手に入れていたのではなかろうか・・・・

 

 坂本選手は現役を引退し、現在も孤児院で育った子供たちの支援を続けている。

 彼の戦いはまだ終わっていないのだ。

 

 畑山選手も歴史に名を残す偉大なファイターだが、同じくらい坂本選手も気高いファイターであることを皆さんには是非知ってもらいたい。

 

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